温かいバンドサウンドにのせて日常に寄り添う音楽を届けるab initio、不器用だが前向きに等身大の恋愛や生活を歌うBreathing Booostという2バンドが、9月20日に新作ナンバーを配信リリースした。ab initioは「さかさまの空」、Breathing Booostは「嫌いになれたらいいのに」。それぞれ新たなサウンドアプローチや歌詞の視点を取り入れ、より多くのリスナーに届けるべく完成させた意欲作になった。
もともと2018年にLINE RECORDSが協力パートナーとして参加したバンドオーディション「BANDWARS –バンドウォーズ」に応募したことをきっかけに活動の幅を広げている2組。グランプリを獲得したab initioはLINE RECORDSからデビューを果たし、審査員特別賞であるnao賞を獲得したBreathing Booostは、1年を通してLINE LIVE配信で活躍した方を表彰する「LINE LIVE Presents LIVER AWARD 2018」のグランプリにVo.U-keyが輝いている。
以下のテキストは、そんな両バンドのボーカル宮崎優人とU-Keyを迎えた初対談。ふたりの出会いから最新作へのこだわり、年末のライブまで、藤田琢己が話を聞いた。
インタビュアー:藤田琢己
――ab initioとBreathing Booostは、共にリリースが9月20日にありました、狙っていたんですか?
U-key:それはあのー……僕らというよりは。
――大人の方々が(笑)。
宮崎:はい(笑)。
バンドオーディション「BANDWARS –バンドウォーズ」について
――そもそも接点がある2バンドですよね。LINE RECORDSが協力パートナーとして参加したバンドオーディション「BANDWARS –バンドウォーズ」のファイナリストである、と。そのときはお互いに火花を散らし合う同士だったわけですけど、いつ頃からお互いを意識していたんですか?
U-key:予選の段階ですかね。
宮崎:はい、存在は知ってました。僕はBreathing BooostのライブがLINE LIVEで中継されていて、それを楽屋で見たり、チラッとステージにも見に行ったりもしましたね。
――出場者の1組を把握しておく、みたいなことだったんですね。
宮崎:そうですね。
――決勝戦のときは、けっこう周りを意識していたんですか? それとも自分のステージに集中していたのか。
宮崎:僕個人的に言うと、かなり周りを気にしてましたね。「この人どういうライブをするんだろう?」って。めっちゃ盛り上がってる、ヤバいみたいな。Breathing Booostは、1曲目でバラードをもってきて、めちゃくちゃ良いなと思ったら、2曲目でものすごく盛り上げてて、「ヤバい人がいるな」と思ってました。かっこいいし。オシャレだし。
U-key:いやいや。あの日、ステージの目の前に審査員の方がいらっしゃったんですよ。とりあえず、その審査員の方の圧がスゴくて(笑)。
宮崎:山田孝之さんとかね。
U-key:そう、素晴らしいプロデューサーの方々の前でやらなきゃいけなくて。とりあえず何も考えずにライブをしてました。
宮崎:考え出すと、精神的にヤバくなりますよね。場所が吉祥寺CLUB SEATAだったんですけど、目の前に審査員の方がいて、その向こうがお客さんなんです。
――ある意味、最前のお客さんが審査員だったわけだ。
宮崎:そう。いろいろ考え出すと、ヤバい!怖い!みたいになっちゃうんですよ。
U-key:すごいデカいカメラがズラーってあって。あー、怖いって。
宮崎:そんな環境でやったことがなかったからね。
――じゃあ、Breathing Booostに関しては、ab initioを認識できてなかったですか?
U-key:そうですね。やっぱり勝ちたかったし、オーディションで何か結果を残したいっていうので必死でやってたから。周りというよりは、まずは自分のパフォーマンスをしっかりやらないとなって思ってて。頭が真っ白でした。
――その後、お互い共演する機会もあったと思いますけど、ちゃんと話をしてみて感じたお互いの印象はありますか?
U-key:とりあえず2バンドとも名前が読みづらいっていう……。
宮崎:たしかに(笑)。
U-key:僕らもめっちゃ間違えられるんですよ。「ブ、ブレー? ブレッシング?」とか。メールではスペル間違いが当たり前なんです。
宮崎:Oが3つなんですよね。
U-key:アブさんもけっこうそうじゃないですか? 読み方が特殊だから。
宮崎:「アブ・インティオ」とかありますからね。
U-key:ですよね。最初はどうやって読むんだろう?って思ってました(笑)。
お互いの印象について
――バンドのイメージはどうですか?
U-key:初めてab initoのライブを見たときは、温かくて、優しくて。楽曲とかライブで包み込まれるというか。それがab initio感だなと思いますね。
――宮崎さんの印象は?
U-key:バンドのイメージがそのままだったりするんですよ。好青年ですよね。音楽を伝えるっていうところに真っ直ぐでアーティスティックなところがあるから、そういうところがかっこいいなって。
宮崎:かっこいい人に「かっこいい」って言われるのは照れちゃいますね(笑)。
――ab initioはBreathing Booostを見て、どう思いましたか?
宮崎:最初は「この人と仲良くなれないな」と思ってたんですよ。俺の性格上、違う世界にいる人に見えてたんです。でも、ライブが良かったから、終わったあとに話しかけに行ったんですよ。「これからよろしくお願いします」って。そしたら、すごく低姿勢で「こちらこそよろしくお願いします」って言ってくれて。あ、これは愛されるなって思いました。
U-key:(笑)。
宮崎:で、そのあと、いろいろ調べたら、LINE LIVERとして、ものすごい人気なんですよ。何て言うんですか……神的な(笑)。
U-key:いやいや、そんなことないです!
――Breathing Booost はナンバーワンの称号を得たLINE LIVERですからね。
U-key:2018年ですね。
――それが、音楽を広げる可能性のひとつになってると思いますけども。
U-key:そうですね。僕は違うバンドでメジャーデビューをしてるんですけど、なかなか芽が出なくて。本当に音楽をやめようと思ってたときに、LINE LIVEと出会ったんです。最初は、みなさんと一緒のスタートラインではじめたんですけど、「楽しいな」と思って続けてるうちに、ちょっとずつ結果が出てきて。去年はグランプリをいただいて。LINE LIVEがなかったら、たぶんブリージングも、僕も、音楽を続けられてないんじゃないかなっていうぐらい、本当に大きな存在ですね。
――もちろん既存の音楽を広げるやり方も知ってるじゃないですか。でも、その先に何かあるかわからないけど、まず、LINE LIVEで配信してみようっていうことですよね。別に何かのカリスマっていうわけじゃないけど、横一線のなかでチャンスを掴むっていうのは夢のある話だなっていうのはあるなと思います。レディー・ガガにも会ったんでしょ?
U-key:はい。ロサンゼルスに招待されて。
――「はい」って即答できるのがすごい(笑)。
宮崎:すごいですよね。
――で、ab initioは、「BANDWARS –バンドウォーズ」のグランプリ獲得をきっかけに、LINE RECORDSのアーティストとしてデビューしたわけです。周りのバンドマンに何か言われましたか?
宮崎:「え、LINE!?」って驚かれましたね。
転機
――パッケージとしてリリースするのではなくて、サブスクリプションを中心に、LINE MUSICが持つ様々な音楽サービスを活用するかたちっていうのは、ひとつのモデルケースというか。バンドとして楽曲のリリースの活発になって、時代の変化のなかで新しいフィールドを見出そうとしてるんじゃないかと思いますね。やはり大きな転機でしたか?
宮崎:完全にそうですね。僕らも、U-keyさんと同じように解散がよぎったことがあったんですよ。それがBANDWARSにエントリーする前だったんですよ。その1年ぐらい前に、高校から9年間ずっと一緒にやってたドラムが脱退して。
U-key:えー……。
宮崎:「誰かが抜けたら、解散だよね」みたいな話もしてたぐらい4人で団結してたから、これはヤバいってなったんですよ。で、「どうする?」って話し合って。でも、まだやり切ってないし、やめるわけにはいかない。それで、いままでどおりの活動じゃなくて、もともと僕はJ-POPが好きだったから、曲の方向性をガラッと変えたんですね。そこから1年ぐらいやったんですけど、結果が出なくて。やっぱり厳しいのかな?みたいな状況のなかで、BANDWARSに出会って。それに賭けてみたら、優勝することができたんです。
――話を聞いてると、共通点がありますよね。もう活動が続かないんじゃないかっていうタイミングがあって、そこから、きっかけを掴むっていう。
宮崎:そうですね。底辺までいきましたからね。
U-key:メンバーの脱退はキツいですよね。やっぱりバンドはひとりじゃないですから。みんなでやっていかなきゃいけない。そういうのを乗り越えてのグランプリっていうのは感動しました。みんなそういうふうにがんばってるんだなって思いますね。
――BANDWARS以降の活動の広がりというのは、どんなふうに振り返りますか?
U-key:僕らは、特別賞で、nao賞をいただいたんですけど。その後、naoさんと一緒に曲を作る機会が何回かあって。今回の「嫌いになれたらいいのに」もそうですけど、いままでのBreathing Booostをぶっ壊してくれるんですよ。これは俺らだけだったら絶対に作れないなっていう曲を、naoさんのアイディアと感性が入ることで生まれるんです。それをライブでやってみたら、ウケが良かったり、ライブでも盛り上がったりするから。BANDWARSの時の自分らより、すごくパワーアップしたなって実感してます。
――ab initioはどうですか?
宮崎:僕らも同じように、BANDWARSで審査員として参加されていたコモリタミノルさんと一緒に楽曲を作るようになって。今回の「さかさまの空」で10曲目なので、全部ではないんですけど。で、ブリージングとはちょっと違うかもしれないけど、コモリタさんは僕の良さをすごく伸ばそうとしてくれる人で、毎回、「めっちゃ良いのを持ってるよ」「すごいのができたね」って言ってくれるんです。そのうえで、いままでのab initioが4人では表現しきれなかった部分というか、僕の歌詞を全面に出すために必要な要素を埋めてくれたんですよね。そういう意味では、ab initioもパワーアップしましたね。
――ちなみに、U-keyさんとしてはやっぱりBANDWARSでグランプリを獲りたかった?
U-key:そうですね……でも、あの日の動画を見返したんですけど。やっぱりグランプリはab initioさんだなあって思いました。
――でも、その悔しさも刺激になったんじゃないですか?
U-key:はい。「BANDWARS」をきっかけにバンドメンバー全員がまとまるというか、あそこで負けたことによって、がんばれたことがたくさんあったんですよね。「もう1回、前に進もうぜ」っていうきっかけになったので。もちろん1位はとりたかったけど、負けたことで得るものがあった。それが大きかったから、いまはnaoさんと作るっていうチャンスを生かして、今後もやっていきたいですね。
ab initioの「さかさまの空」、Breathing Booost の「嫌いになれたらいいのに」について
▲ ab initio『さかさまの空』(作詞:宮崎優人 作曲:宮崎優人)
2019年9月20日配信 / LINE RECORDS
LINE MUSICはこちら
▲ Breathing Booost『嫌いになれたらいいのに』
2019年9月20日配信 / ピースボイスエンターテイメント
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――そんな2バンドの最新型が、Breathing Booost の「嫌いになれたらいいのに」であり、ab initioの「さかさまの空」に表現されているんじゃないかなと思います。ここからは、それぞれの楽曲についてお話を聞かせてください。
U-key・宮崎:はい。
――まず、Breathing Booost の新曲「嫌いになれたらいいのに」は、どんな曲ですか?
U-key:これはメンヘラの曲ですね。
――Breathing Booostは、そういうふうに響く楽曲がたくさんありますね。
U-key:そうですね。この曲は、大好きだから、大嫌いにもなるし、大嫌いだけど、結果、大好きっていうのがテーマなんですよ。自分が心のなかで揺れてる切ない内容なんですけど、曲は明るいんです。根本にあるのが、君が好きだからっていう気持ちだったら、心地よいアップテンポの曲でも成り立つかなと思ったんです。
――アレンジでも曲の世界観を表現してるんですね。
宮崎:かっこいい曲ですよね。踊れるし。嫌いになれたらいいのに~♪って。
――はははは、踊ってる(笑)。切なめなのに踊れるっていうのが特徴的だし、いままでの作品とも色が違うかなあと思いましたね。
U-key:いちばん攻めてると思います。ビート感も曲調も。あと、アレンジとしてシンセとかエレピを多めに入れてるので、音源で聴くのと、ライブに来てもらって、生で聴くのは少し感じが違うので、そこで二度楽しめる曲になればと思ってますね。
――ab initioの新曲は「さかさまの空」。これもまただいぶ変えてきましたね。
宮崎:まず、テーマとしては、夢とか応援歌というところですね。ab initioって、夢とか応援歌を歌うのはあんまりなかったんですよ。というより、どっちかと言うと、日常に転がってる幸せをそっと歌うような。僕がそういうのが好きなんです。でも、今回はLINE LIVER応援ソングとして書かせてもらったので、「夢を追いかける若者の背中を追いかける曲にしたい」みたいな話もあって、どういう感じの曲にしようかなって考えたんです。
――うんうん。
宮崎:ってなったときに、やっぱり僕は言葉で「いけ!」とか「がんばれ!」っていう感じじゃないんですよね。僕のなかで、何が背中を押すものになるんだろう?と思ったときに、応援してくれる人の存在は絶対なんですよ。ab initioとして活動してると、苦しいこともあるんですけど、「今日のライブ楽しかったです」とか言ってくれると、それだけでやってきてよかったなと思える。そういう「応援する人のちから」を歌いたいなと思ったんです。だから、これは僕自身の、応援してくれる人への感謝の曲って捉えることもできるんですよ。夢を追っている人と応援する人の関係性というか、そういうものを歌ってますね。
――なるほど。
宮崎:夢を追っていれば、つまずいたり、悩んで立ち止まったりするじゃないですか。そういうときは良くないところばっかり見ちゃうけど、見る方向を変えて、応援する人がいたら、「また明日からがんばろう」って思ってもらえたらいいなと思います。
U-key:歌詞の内容は、熱かったり、がんばってる人の背中が見えるような世界観だなと思ったんですけど、ちょっとビート感が楽しい感じですよね。
――モータウン・サウンドを彷彿とさせますよね。
U-key:そうなんですよ。だから、切ないけど、がんばる、みたいな。
――ともに表面上の歌詞で読み取れる部分だけじゃなくて、音にも意図があることがアレンジに上手く表れていますよね。だから、一聴して、「あれ?このテーマでこの曲調?」っていうのは、共通している部分かもしれないですね。
U-key:近いところはあると思います。
宮崎:たしかに。たぶん歌詞をより良くするアレンジを考えてるんですよね。それで、「あえての」っていうところを狙っていて。ブリージングもアブも歌詞を見てほしいです。
U-key:そうですね。
――歌詞へのこだわりとしては、宮崎くんは「ちょっとした幸せを歌う」のが好きっていう話でしたけど、U-keyくんが書きがちな視点とか特徴はありますか?
U-key:ありますねえ。これは言わないといけないですか(笑)?
――いや、紐解いてもらうために隠しておきたければ、全然いいんですけど。
U-key:冗談です。
――言っちゃって!
U-key:ははは。僕も、さっき宮崎さんがおっしゃってたみたいに、押しつけがましいとか、命令的な言葉は選ばないようにしてますね。ふだん自分が使わないから。配信では、冗談で「ついてこいよ!」とか言うんですよ。そういう系のことを歌うと、喜んでもらえたりするんです。でも、意外と僕は「ついてこいよ!」っていうタイプではない。だから、自分が使える言葉を楽曲にのせたいっていうのは共感しますね。
得意なテーマについて
――自分の性格的に得意なテーマはありますか?
U-key:自分の恋愛の価値観とか、好きだからこそ相手のことを思いすぎて、疑ってしまったりする、心の葛藤を曲に表せたら、同じように誰を思ってる人に届くのかなっていうのは、いちばん考えますね。だから、恋愛体質な人に聴いて共感してもらえたら嬉しいです。
――それで気づいたのは、ブリージングの新作のジャケはハリネズミがモチーフになってるじゃないですか。そのへんにもU-keyさんの恋愛観が表れてるのかなと思って。
U-key:そうですね。あれはハリネズミのジレンマですよね(針で近づけない2匹のハリネズミの寓話から、他者と適度な心理的距離を保つ恋愛における関係性のこと)。これはあとづけなんですけど。ジャケットのデザインをどうしよう?と思ったときに、パっと思いついたんですよ。別にそれを元に曲を書いたわけじゃないんですけどね。
――楽曲を紐解いていくことで、バンドのスタンスが見えてきますね。というわけで、年末には2バンドともにワンマンライブが控えています。まず、Breathing Booostは11月22日、赤羽ReNY alphaですね。
U-key:これが3回目のワンマンなんですけど。さっきも言ったとおり、新しい曲がたくさんできているので、新しいBreathing Booostを見てもらえるんじゃないかなっていうのはワクワクしてます。でも、前みたいにそこで120%というよりは、自分たちでもライブを楽しみながら、僕らの新しい出発点を見てもらうつもりでライブをしたいなと思ってます。
――一方、12月20日はab initioの渋谷WWWのワンマンが控えています。
【ab initio史上最大キャパワンマン詳細】
イベント名:ab initioより。[SHIBUYA WWW ONEMANLIVE]
日時:2019年12月20日(金) 19:00~ (open 18:00~)
会場:Shibuya WWW(〒1500042 東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル地下)
チケット:-\2,500(当日 \3,000)
※LINEチケットにて販売中:LINE TICKET はこちら
【Breathing Booost 3RD ONEMAN LIVE 詳細】
イベント名:「GET A BOOOST!! VOL.03」
日時:2019年11月22日(金) 18:30~ (open 18:00~)
会場:赤羽ReNY alpha
チケット:-\2,500(当日 \3,000)
※LINEチケットにて販売中:LINE TICKET はこちら
宮崎:とにかく温かいもの、優しいもの、感動するもの、グッとくるものを日々探しながら、渋谷WWWに向けて、音楽に変換できないかって考えてますね。いまは毎月10本路上ライブをやってたり、ab initioに興味を持ってもらえる活動もがんばってるので。12月20日は僕らにとってバンド最大規模のキャパに挑戦するので、ぜひ来てほしいです。